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ジャン・デビュッフェ著「文化は人を窒息させる」を読んで。

  • アトリエ主
  • 2020年8月21日
  • 読了時間: 2分

更新日:2022年2月1日

こんばんは。アトリエ主です。


ステイホームが続く中、ジャン・デビュッフェ著「文化は人を窒息させる」という、なんとも刺激的なタイトルの本の読書に励みました。


我々、「文化」というものを「振興」する立場の者からすれば、穏やかならざるそのタイトルに否定的な感情を持ちつつも、その意図するものは何ぞや??と、つい手を伸ばして読み始めるに至りました。

著者の身分を知ると、その言に、反文化にいたる明確な根拠があろうことが得心できます。

著者ジャン・デビュッフェ(1901-1985)は、画家にして文筆家。「アール・ブリュット」という言葉を生み出し、スイスにその作品のコレクションを開設したことで知られます。


鳥取では、2014年に、全国障がい者芸術・文化祭の一環として「アール・ブリュット展」が開催されました。言葉の意味する「生の芸術」の通り、社会の規範や常識、芸術教育にとらわれない作家たちによる創作が一堂に会した展示は、「鮮烈」の一言に尽きました。


そんなアウトサイダー的な作品に芸術の本質を見る著者が、いかなる理由から、文化は窒息させるものだという答えに帰結したのでしょうか?

一文引用します。

~文化が有害なのは過去の作品を紹介することに執着するからだけではない。---語彙を作ることである。文化は前もって作られた観念を伝えることによって---すべての言葉が粗雑に単純化され---絶えず動いているものを固定し---概念を単なる数字に変えてしまう。~

※(---は中略)


難しいですよね(汗。

伝えることとは、取捨選択が内包されていることを忘れてはいけません。今、良いとされる物とは、時代の嗜好によってたまたま取捨選択されたものであって、その網にかからなかったものは、存在すらしなかったようになっていませんか?

冒頭から語られるこの思想にドキッとします。社会がより便利に、複雑ながらも記号で整理された世の中になればなるほど、その隙間で自由な表現を求める動きは誰の目にも留まらないようになります。

お仕着せの「良いもの」を、万人が「良い」と思った時点で、「自由な表現」そのものは死滅しているのかもしれません。

ここで語られる「文化」は、芸術・創造に主軸を置きますが、我々文化を振興する者は、一人一人がこの現実を知っておかなくてはなりません。我々現代人は、体制を転覆させる気概は削がれていますが、このことを含めて伝えることぐらいはきっとできるはずです。


引用はほんの一部です。様々な視点から、厳しく文化を批判した本です。文化を担う者の矜持として、このお叱りを頂くのも良いことに思いました。興味のある方はぜひご一読下さい!


アトリエ主でした。



 
 
 

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